歌い、叫び、燃え上がるアリーナ。ベオグラード・ダービーの熱狂|セルビアバスケ視察日記

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歌い、叫び、燃え上がるアリーナ。ベオグラード・ダービーの熱狂

セルビア視察レポート第6回です。
前回の投稿から時間が空いてしまいましたが、今回はもはや「セルビアの文化」と呼んでも過言ではない、ベオグラードのダービーについて書いてみたいと思います。

舞台はベオグラード市内にある、巨大なアリーナ。
ここを本拠地とする2つのクラブ、KKパルティザンとKKツルヴェナ・ズヴェズダ(通称レッドスター)。過去の記事でも紹介してきたように、パルティザンは国内外で実績のあるビッグクラブ。対するズヴェズダも、数々の国際的スター選手が所属し、現在もパルティザン同様にユーロリーグに参戦しています。

さて、試合当日。前回の試合でも警備体制の厳しさに驚きましたが、今回はそれを遥かに上回る規模。警備隊員の数、配備された車両の台数、どれをとっても「一大イベント」としての緊張感が漂っていました。

この日は朝の練習時からテレビの中継も入っていました(時間ギリギリまでユースの練習があったので、会場入口周辺の写真が撮れませんでした)

幸運にも、チケットを手に入れることができたおかげで、会場に入ることができました(最後に触れますが、チケットは完売で買えずに困っていたところを助けてもらえました)。アリーナに足を踏み入れた瞬間、その空気感に圧倒されます。客席はすでにぎっしりで、座るというよりも、観客たちはどんどん前方に降りて、立ち上がって応援するスタイル。私の席の周囲も、いつの間にか“応援ゾーン”に早変わりしていました。

ゲーム中、誰も座っていません。椅子は荷物置き、通路は応援スタンド。それがベオグラード流の観戦マナー

この日はパルティザンのホームゲームだったので、選手紹介が終わると、パルティザンの応援歌(伴奏)が大音量で流れ始め、観客全員が一斉に白黒のタオルを掲げ、約4分間歌い続けました。その一体感と迫力は、まさに“宗教的”とさえ思えるレベル。

試合が始まっても、応援の熱気は冷めることなく、BGMが聞こえないほど。感情の爆発とも言えるような歓声がアリーナ中に響き渡ります。そして試合中盤、ズヴェズダのファンが固まっているエリアから突然、真っ赤な花火が。タバコはもちろん、花火までOKという、日本との消防法の違いはこれほどかと驚かされました。

火花が下の席に垂れていたのが気になりました⋯

試合は4Q 残り1秒まで同点、最後はズヴェズダのフリースローでパルティザンが敗北という結末に。しかし、試合後に暴動や混乱が起きることはなく、観客たちは拍子抜けするほど静かに、それぞれの帰路につきました。

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実は今回チケットが手に入ったのは、現地で知り合った何人かのコーチやユース部門のスタッフが「せっかくだからダービーを見てほしい」という親切から、ゲームの会場準備の合間を縫って当日なんとかしてくれた、といういきさつがありました。しかも、「もしダメだったら、おれの分を渡すよ」とまで言ってくれたコーチもいました。

なぜ、日本から来た会ったことのないコーチであっても「セルビアのバスケを学びに来た」というだけで、現地の方々が信じられないくらい親切に接してくれたのか。若さとエネルギーに満ち溢れた学生でもなければBリーグのコーチでもなんでもない、無名のユースチームの指導者でも、いろいろな体験をさせようとしてくれたのか。

東頭からは「何者でもなくても、現地に行って学びたい姿勢が伝われば案外受け入れてくれる」ということを聞かされていましたが、今でも本当に不思議なくらい、たくさんの人に良くしてもらえました。

たしかに海外視察にはある程度の費用や準備が必要です。
でも、いざ現地に着いてみれば、単にゲームや練習を見ることにとどまらず、想像もできないような人との出会いがあって、日本にいて映像や本を見るだけでは得られない、とても濃い体験が待っています。

たとえ短期間でも行って良かったですし、この記事を読んでいる人の中から、1人でも多くの人が“ほんのちょっとした決断”をしてくれるひとが現れたら、日本のバスケはきっともっと良くなるのではないか──。

会場のとてつもない雰囲気とコーチたちの優しさの余韻の中、そんなことを考えながら宿へ帰ったことを今でも鮮明に覚えています。

それではまた。

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この記事の著者

小野祐紀

1989年生、神奈川県出身。JBA公認C級コーチ、C級審判員。
大学卒業後、PR会社・広告代理店などを経て独立。合同会社ELPIS、企業の広告案件の仕事をしながら、都内でミニバスチームやU15クラブのコーチ、U12 DCスタッフなどを務める。

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